僕のトラウマ映画「ジョーズ」

ジョーズ Jaws

1975年公開

監督 スティーヴン・スピルバーグ

出演 ロイ・シャイダー / ロバート・ショウ / リチャード・ドレイファス

 

子供の頃、夜寝る時に布団から足を出すことができませんでした。サメに足を食い千切られてしまう、という妄想に取り付かれていたんです。いつも布団の中で丸くなって、足を守りながら寝ていました。家の中にサメなんかいるわけがありませんが、子供にそんな常識は通用しません。鋭い歯が並んだ巨大な口が襲いかかってくるイメージに、毎日脅えていたんです。

それもこれも全て、この映画のせいでした。本編は観ていなかったのですが、TVでこの映画の紹介をしているのを見てしまい、それがトラウマになってしまったのでした。当時のTVはエログロなんでもありでしたから、これよりもっと残酷な映画の紹介も昼間っから平気でやってました。僕は殺人鬼やモンスターの影に怯えながら、子供時代を過ごしていたのです。

しかし、成長するにつれて、ホラー映画を観ることは趣味に変わっていきました。妙にグロ耐性が付いてしまい、後にスプラッター映画の大ブームが来た時には、血まみれの映画が大好きになっていました。

本編をちゃんと観たのは、たしか高校生の時だったと思います。すでにトラウマは遠い過去になっていましたから、観ることに抵抗はありませんでしたが、ただのパニック映画だと思っていたら、予想外の冒険活劇だったことに大興奮して、一気にお気に入りの映画になりました。

ジョーズ」の音楽として思い出すのは、サメに銛を打ち込むシーンの勇壮な音楽であり、あの不気味なテーマ曲ではなくなりました。性格の全く異なる3人の男でも、共闘する中で次第に連帯感を持っていくということの気持ち良さも、この映画の中で知りました。酒を飲みながら、お互いの傷を自慢し合うシーンは、映画におけるホモソーシャル描写の白眉だと思います。

この映画を今まで何度観返したかわかりません。TV放送を録画したテープを、すり切れるまで繰り返し観ました。ただ観るだけでは飽き足らず、カットのつなぎ方やタイミングなどを調べるために、同じシーンを巻き戻して何回もチェックしたりしてました。逆ズームなんていう撮影技法もこの映画で知って、8mmフィルムカメラで真似して遊んだりしていましたね。

最近また観ましたが、やっぱり面白い。映画史に残る大傑作だと思います。