正しい判断をする難しさ「プライベート・ライアン」

プライベート・ライアン Saving Private Ryan

冒頭のオマハビーチ上陸作戦の描写で、戦争映画の表現をガラリと変えてしまった記念碑的作品であります。
この映画について語られるのはほとんど冒頭のシーンだけだと思いますが、僕が一番好きなのは中盤のトーチカ攻撃のシーンです。

トム・ハンクス演じるミラー大尉が率いる小隊は、一人の二等兵を救い出すという、非常に馬鹿馬鹿しい作戦に駆り出されるわけですが、誰もが作戦の無意味さに辟易する中、ミラー大尉はなんとか意味を見出そうと悩み続けています。
そして小隊は、ドイツ軍のいるトーチカに通りかかります。やり過ごそうという部下の意見を無視して、ミラー大尉はトーチカ攻撃を命令します。
意味を求め続けていたミラー大尉は、これで自分たちの行動がアメリカ軍全体の役に立つのだと、やる気満々になります。本来の作戦に支障をきたす行動なのは明らかなので間違っているのですが、作戦そのものに懐疑的なミラー大尉は自分の判断のおかしさに気づかないのです。
そして案の定、部隊に戦死者を出してしまいます。
ミラーは一人で泣きます。死んだ部下を想って泣いたのではなく、自分の判断ミスに情けなくなって泣いたのでしょう。

このシーンは明らかにドン・シーゲル監督の「突撃隊」のオマージュです。

スティーヴ・マックイーン主演のこの映画も、トーチカ攻撃をする小隊の物語です。事務仕事専門で銃を持ったことのない兵士が参加したりするなど、類似点が見出せます。
そしてこの映画においても、正しい判断をすることの難しさが度々語られます。無理やりトーチカに夜襲をかけて失敗してしまったマックイーンは「プライベート・ライアン」のミラー大尉そのものです。

正しかったかどうかは、結局後になってみなければわかりません。外野は無責任に色々言いますが、現場で瞬時に判断を下さなければならない当人は、常に最良の選択をしているつもりなのです。

このテーマは「プライベート・ライアン」全体に通底しています。
ミラー大尉は、情けをかけて見逃したドイツ兵に射殺されてしまいます。これも判断ミスですね。でもスピルバーグは、そのことを批判的に描写しているわけではありません。むしろ、どうすれば正しい判断ができるのかと自問自答しているわけです。

それでは、ライアン二等兵を救い出すという作戦は正しかったのでしょうか?

正しかったんですねえ。

最後に老いたライアンが、家族を連れて墓参りにやってきます。その家族の中に、巨乳の美人姉妹がいます。
ライアンが死んでいたら、彼女達は生まれなかったんですよ!

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