ベトナム後遺症映画の傑作「ローリング・サンダー」
ローリング・サンダー Rolling Thunder
- 1977年公開 アメリカ映画
- 監督 ジョン・フリン
- 出演 ウィリアム・ディヴェイン / トミー・リー・ジョーンズ
ベトナム戦争が終わった頃から、帰還した兵士が戦争の後遺症で精神に異常をきたし日常生活が困難になる、というベトナム後遺症物と呼ばれる映画が数多く作られました。「タクシードライバー」や「ランボー」など名作の多いジャンルであり、この作品も傑作として今でも愛されています。
主人公のレーン少佐はベトナムで捕虜となり、凄惨な拷問を受けた後解放されて帰国します。その悲惨な体験によって完全に心が壊れてしまっていて、無気力で無感動な魂の抜けたような人間になってしまっています。町は歓迎イベントを開き、彼に対して多額の報奨金を与えるのですが、彼はなんの感慨も抱きません。
家族も、別人に変わり果てたレーンを受け入れることができません。彼が帰ってきた日常は、彼にとって居心地の良いものではなくなってしまっていたのです。
そんなある日、家に強盗が入ります。多額の報奨金を目当てにやってきた強盗団はレーンの家族を皆殺しにし、彼の右腕をシュレッダーで粉々に粉砕してしてしまいます。エグすぎる。
ここからレーンによる復讐劇が始まるわけですが、その理由が凄まじい。彼は家族の死に対して、それほど心を動かされません。常に無表情なので、そもそも何を考えているのかもわからない。ただ淡々と復讐の準備を進めていきます。右腕にかぎ爪を取り付け、グラインダーで鋭利に磨き上げます。そして、意のままに動かせるように、かぎ爪で銃に弾丸を込める訓練を繰り返します。そしてベトナム時代の部下ジョニー(トミー・リー・ジョーンズ、若い!)を呼び寄せて、犯人を見つけ出して襲撃します。
心が死んでしまっているレーンがなぜそんなことをするかというと、そうする方が自分らしいからです。無意味な日常生活を続けるよりも、戦場の方が居心地がいいのです。銃を持って敵を襲撃すると精神が安らぐのです。レーンにとってこれは復讐ではなく戦争なのでした。最初はレーンの感情が読めずに困惑しましたが、これを知った時、なんと凄まじい映画なのだと愕然としました。
数あるベトナム後遺症物の中でも、衝撃度ではこれが一番です。大傑作。